医師に聞いた「薄毛の清潔神話と角質層の大切さについて」

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あらなみクリニック院長(慶應義塾大学漢方医学センター非常勤講師)でありAGAに関する書籍の著者でいらっしゃる荒浪先生にAGA・薄毛・若ハゲに関するお話をお伺いしました。

筆者紹介山さん大手エステチェーン2社にて店舗開発の責任者として200店舗以上の出店業務を担当。美容業界専門行政書士・AJESTHE美肌エキスパート(日本エステティック協会)小池現役看護師 自分の体に強いコンプレックスを感じ、各種二重整形を始め様々な整形術・ダイエットを行った経験を持つ

清潔にすることはいいことか?

現在に生きる日本人は、清潔ということを気にしすぎるきらいがあるのではないでしょうか?洗髪だけでなく、何に対しても、洗いすぎたり、殺菌しすぎたりすることがいいことだとは思えません。もちろん、シャンプーも同じです。

冬になると、病院やオフィスビル、公共施設の入り口などに、消毒のためのスプレーが設置されます。たしかに、インフルエンザ予防には、外から帰ったら、手洗い、うがい等を励行することは有効です。このスプレーは、アルコール由来なので、感染症の細菌を殺菌します。

このスプレー、肌にとってはどうなんでしょう?しょっちゅう使っていると、手荒れの元になります。アルコールを頻繁に使う医療従事者で、手指があれている人はたくさんいます。
ガサガサに荒れた手指の表皮には、細菌やウイルスが付着しやすくなります。何事も、過ぎたるは及ばざるがごとしです。

ウイルスと細菌の違い

ウイルス、細菌とひとまとめに言いますが、ウイルスと細菌は全然違うものです。ウイルスは、生命としての最小単位としての細胞を持っていませんし、外部からの栄養補給を得て、増殖もしません。ウイルスは、ほかの細胞上で遺伝子情報のコピーを作って増えます。細胞とは全然違う点です

こういうウイルスの性質から、ウイルスは、無生物に分類されることもあります。生物でない無生物のウイルスを殺すことはできません。また、ノロウイルスは、アルコールに対して、耐性もあるので、消毒薬のみで防ぐことはできないのです。

せっけんの使いすぎに注意

あなたのご家庭では、いわゆる普通の浴用石鹸をお使いですか?それとも薬用せっけんをお使いですか?薬用せっけんは、殺菌効果が高く、皮脂まで洗い流します。先ほどのアルコールと同じで、使いすぎると肌が荒れます。これまた、適度な使用をお勧めします。

実は水道水で流すほうが良い

ここまで、殺菌のやり方について述べてきましたが、先ほど述べたアルコール消毒と、流水で洗うのとでは、どちらが効果的だと思いますか?医学部での実験では、流水できれいに洗い流す方が効果が高いということが証明されました。つまり、せっけんやハンドソープに頼りすぎず、流水で洗うほうがいいのです。

手に付着したノロウイルスは、流水で15秒洗い流すと、100分の1にまで減ると、東京都福祉保健局は言っています。要するに、水道水に含まれる塩素だけでも、十分効果があるということです。

過度なシャンプーやせっけんの利用は逆効果

先ほども述べましたように、せっけん等で荒れた肌には、細菌が付着しやすく、とどまりやすくなります。もともと、人間の体上には、100兆以上の常在菌がいます。その中の善玉菌が、外的な刺激や悪玉菌から、皮膚を、そして頭皮を保護してくれています。

ここで述べたことをまとめると、悪影響を及ぼす恐れのある真菌や他の細菌に感染しているときを除いて、薬用せっけんやシャンプーを過度に使うのは、害こそあれ、必要のないことだと思います。

角質層を大切にしないと薄毛になりやすい

現在、私たちが使っている大半のシャンプーには、界面活性剤が入っていると、下記の記事で紹介しました。界面活性剤の作用の仕方を簡単に述べますと、脂を浮かせて除去するのです。この時に角質層を保護している脂分まで一緒に取ってしまいます。その結果、角質層にひびが入ります。

硫酸系界面活性剤の危険

さらに悪いことには、シャンプーやせっけんに入っている界面活性剤のほとんどは、「硫酸系」なのです。硫酸系の界面活性剤は、洗浄する力がとても強力なうえ、たんぱく質まで溶かします。つまり、角質層にまで影響を及ぼします。先ほども述べましたように、シャンプー、石鹸を使いすぎると、角質層に大きなダメージを与えてしまいます。

インフルエンザ流行の季節になると、皮膚科である当院にも、インフルエンザ予防のための手洗いが原因で手荒れをひどくした子供がたくさん来院します。硫酸系の界面活性剤が引き起こしています。できるなら、硫酸系界面活性剤を避け、アミノ酸系界面活性剤に変更することをお勧めします。それらは、地黄せっけんとして売られています。

手荒れが起こるということは、当然、体や顔にも同じようなことが起こっていることになります。シミ・シワ・タルミなどを作らないためによかれと思ってしている洗顔が、かえってそれらを引き起こしかねません。それらを防ぐためには、角質層を守るため、なるべく洗顔しない方がいいのです。洗いすぎは、よくないということを理解してください。

不潔にするのも、もちろんよくない

だからといって不潔にすると、皮膚に特有の黄色ブドウ球菌が、繁殖しがちになります。また、寝る前、化粧を落とすための洗顔は欠かせないですよね。この場合も、アミノ酸系界面活性剤が入ったせっけんを使うことをお勧めします。

洗顔をどのようにするかも大切です。泡でそっと包むように洗うのが理想です。決して、ゴシゴシ洗わないでください。スクラブ洗顔も避けてください。確かに汚れは落ちますが、角質層にダメージを与えます。

角質層にダメージを与える洗顔方法は避ける

繰り返します。角質層にダメージを与える洗顔方法は、避けてください。特に、ピーリングせっけんは、何度も使えば、角質層はズタズタになって、毛穴が大きく開きます。良かれと思ってしていても、ダメージを与える結果になってしまいます。

洗顔で言えることは、洗髪でも同じように言えます。硫酸系界面活性剤配合のシャンプーで洗うことは、汚れは強力に落ちるかもしれませんが、角質層には。相当なダメージを与えるということを理解してください。

毎日、毎日、硫酸系界面活性剤入りのシャンプーで頭を洗い続けることは、薄毛を助長します。荒れた土地に、よい作物の収穫を期待できないのと同じです。

清潔を勧めることがビジネスになりつつある

日本人は、もともと清潔好きな国民性ですが、最近の、必要以上に清潔を求める風潮には、一抹の危惧を感じています。ドラッグストアの棚に並んだ、「抗菌」「除菌」と銘打たれた商品の多さといったら、ちょっと考えものです。

そんなに清潔が必要か?

ほんとうに、そんなに清潔が必要なんでしょうか?人間の体には、前述しましたように、常在菌と言ってたくさんの菌が住んでいます。とりわけ、腸のなかの細菌(腸内フローラと言います)は、人間の体にとって、必要不可欠なもので、それらを万が一、除菌しつくしたら、人間は生きてはいけないのです。

腸の中だけの話ではありません。皮膚の表面にも常在菌はおり、その中の善玉菌がとても役立っています。しかし、殺菌、除菌効果の高い商品を使いすぎると、悪玉菌だけでなく、善玉菌まで殺してしまいます。

耐性菌

「耐性菌」という言葉を聞かれたことがあると思います。抗生物質の使い過ぎによる、どんな抗生物質も効かない耐性菌が出現してしまいます。SFの中の話ではなく、現実の問題として、このような耐性菌が増殖したら、人類滅亡にまでつながりかねないのです。

一昔前の医療現場では、風邪をひいたら、抗生物質が当たり前のように処方されていましたが、今や、使いすぎないようにしています。薄毛の一因である粃糠脱毛の場合、マラセチアという真菌が検出されたら、抗菌剤入りシャンプーが処方され、効果があります。

薄毛のために抗菌する必要はない

しかし、薄毛予防のため、抗菌効果のあるシャンプーを使うことは必要ありません。それだけではなく、害を及ぼすのです。どういうことかと言いますと、抗菌剤でかぶれたり、必要な常在菌まで殺してしまったり、先ほど言った耐性菌を生み出す可能性さえあるからです。

清潔志向もほどほどに、というのが、長く医療の現場に身を置いている私の考えです。お肌や髪の健康を考えるのなら、抗菌ブラシ、抗菌せっけん、抗菌シャンプー、抗菌リンスなどの使用は控えた方がいいと思います。