AGA薄毛治療は本当に可能か?現代の医療について医師が語る

あらなみクリニック院長(慶應義塾大学漢方医学センター非常勤講師)でありAGAに関する書籍の著者でいらっしゃる荒浪先生にAGA・薄毛・若ハゲに関するお話をお伺いしました。

筆者紹介山さん大手エステチェーン2社にて店舗開発の責任者として200店舗以上の出店業務を担当。美容業界専門行政書士・AJESTHE美肌エキスパート(日本エステティック協会)小池現役看護師 自分の体に強いコンプレックスを感じ、各種二重整形を始め様々な整形術・ダイエットを行った経験を持つ

薄毛治療は本当に現在の科学で可能?

どのぐらいの方が薄毛に悩んでおられるのでしょう?現在、約1840万人の方が薄毛に悩みを持っておられます。そのうち、女性は約600万人です。実際、現代を生きる我々は様々な負担を頭皮にかけています。硫酸系界面活性剤が入ったシャンプーの使用が一番の問題です。その使用を止めれば、相当数の方が悩みから解放されると思います。

頭皮マッサージだけでは発毛は難しい

次にできることは、頭皮マッサージとお考えかもしれませんが、前述したように、頭皮の血行を良くするためには、相当な時間を毎日する必要がありますが、なかなか難しいですし、その有効性を考えると積極的にはお勧めはできません。

実際に効果を上げようと思ったら、毛母細胞自体にまで影響を与えるほどの血流アップを図る必要があり、それには長時間のマッサージを要求されます。実際的ではありません。

育毛剤含まれる成分

  • 血行促進作用 塩化カルプロニウム、センブリエキス、酢酸トコフェロールなど
  • 毛母細胞、毛乳頭に作用 t・フラバレン、アデノシンなど
  • 毛母細胞に栄養補給 ペンタデカン酸、ニコチン酸など
  • 皮脂分泌抑制作用 エチニルエストラジオールなど
  • 角質を柔らかくする サリチル酸など

実際には発毛まではなかなか難しい

これらの育毛剤は、ある程度までなら抜け毛を防げますが、発毛まではなかなか難しいです。天然の植物や果実を配合しているものもありますし、私自身、漢方生薬の専門家ですが、それらにも、発毛まで導くものはなかなかお目にかかりません。テレビで、どなたかが、「毛が生えてこない」とぼやいておられましたが、その通りです。

根拠のある薄毛治療法にお金を使うべき

育毛剤や育毛治療に、多額のお金をつぎ込んだという患者さんもおられます。私も以前、テレビの情報を信じ、薄毛予防のためにメカブを毎日食べ続けましたが、もちろん、効果があらわれたということは、残念ながらありませんでした。お金を使うのなら、根拠があり、効果もある薄毛治療法に使いたいものです。

インディアンに薄毛が少ないのはなぜか?

「インディアンに薄毛が少ないのはなぜか」というキャッチコピーをきいたことがありますか?なぜか、惹かれませんか?そういえばと、説得されそうです。その地域でしか取れない植物を配合したシャンプーが売り出されました。確かに、インディアンは薄毛になりにくい遺伝的特質をもっているのですが、そのイメージを利用したうまい広告でした。

今の例のように、配合された成分に、血流をよくする働きがあるとしても、ミノキシジルのように、それが発毛には直結することはなくても、イメージ先行で、商品が開発され、売られていきます。たぶんに、CMというのは、そういうやり方で商品を売っていくものです。ただのせられて、お金を無駄に使うのは避けたいですね。

以上のような混乱した情報があふれているのを危惧し、日本皮膚科学会は、AGAやFAGAの治療指針を2010年にまとめました。

日本皮膚科学会のAGA、FAGAの薄毛診療指針を改めて確認

様々な効能をうたった薄毛対策商品が市販されています。消費者の混乱を防ぎ、患者さんのために、有効性が高いと思われる成分とそうでないものをここに列挙します。

  • A評価(強く推奨)
    ミノキシジル外用(ただし、内服は国内未承認)、フィナステリド内服(男性のみ)
  • B評価(推奨される)
    自毛植毛
  • C1評価(行ってもよいが十分な根拠はない)
    塩化カルプロニウム、t・フラバレン、アデシノン、サイトプリン、ペンダデカン、ケトコナール
  • C2評価(根拠なく推奨できない)
    セファラチン
  • D評価(行ってはならない)
    人工植毛、フィナステリド内服(女性)

ぜひ、お持ちの育毛剤、養毛剤のラベルをチェックしてください。どうでしたか?この成分一覧で特に注目していただきたいのは、C1評価を受けたものです。血行促進、発毛促進の効果はある程度、実験では認められています。

しかし、実用段階では、効果に程度の差が出てしまっているので、「十分な根拠なし」と評価されました。もし、お金を使うのであれば、C1評価のものより、強く推奨されているA評価の方が明らかにいいですよね。

日本皮膚科学会の結論は、はっきりしています。お金を使うのであれば、フィナステリド内服(男性のみ)とミノキシジル外用(両性とも)がよいということです。

薄毛治療は本当に可能?薄毛の原因は一体何か?

先ほども書きましたが、ここ数年の、薄毛治療に対する医学的進歩はすごいです。私自身も薄毛治療を本格的に始めて数年が経ちます。しかし、今までの誇大広告、根拠のないビフォーアフターの写真、体験談等を信じて、治療に高額を費やしたが、効果は出なかったという方にたくさんお会いしています。

「こんなことなら、高級車を買ったほうがずっとよかった」と嘆かれた方がいます。確かに、効果を高らかにうたった治療法や、都市伝説の類が満ち溢れています。しかし、何度も言うようですが、イメージだけにとらわれて、本質を見逃すことのないようにしてください。少し冷静になれば、医学的根拠があるかどうかわかるはずです。

もう一度、抜ける理由を考える

お金をドブに捨てないためにも、そして、本気で薄毛を改善したいなら、もう一度、毛髪の構造、生い立ち、抜ける理由を考え直してみましょう。そして、それに合った正しく、的確な対策、治療をしましょう。まさに、「敵を知り己を知れば百戦危うからず」です。

では、毛髪の構造のおさらいです。皮膚は、表皮層、真皮層、脂肪層に分かれています。真皮から生えている毛髪のうち、皮膚の外側に出ている部分を毛幹(いわゆる髪の毛)、内側の部分を毛根と言います。

毛根を包んでいるのが毛包で、髪の成長にとって重要な役割を果たします。毛包の周りには無数の血管が集まり、髪の成長に必要な栄養分をコントロールする毛乳頭があります。毛乳頭の周りの毛母細胞が分化と増殖を繰り返し、皮膚上に押し上げられ、角化し、毛髪に変わっていきます。

薄毛治療は1にも2にも、毛母細胞

以上の点を踏まえると、薄毛改善のカギを握るのは、1にも2にも、毛母細胞だとわかります。ただただ毛母細胞を元気にすることが大事なのです

毛髪の構造がわかりましたので、次には、ヘアサイクルについても、おさらいしておきましょう。髪の毛は、ご存じのように、伸びる・抜ける・生えるを繰り返します。それぞれ、成長期・退行期・休止期といい、その周期をヘアサイクルと言います。

髪の毛は、一日に0.2~0.4mm伸び、成長期が一番長く約2~5年です。その後、3~6年で抜けていきます。

一般的には、髪全体の約90%が成長期にある太く、しっかりとした髪の毛です。しかし、毛母細胞の元気がなくなると、髪の毛が太く、しっかりする前の細く、腰のないままや、うぶ毛のまま成長しないということになります。

つまり、成長期が短いまま、休止期に移り、そのままぬけてしまうことを、休止期脱毛と言います。その状態が続くと、薄毛が進行し、産毛だけが生えている状態になります。これが、男性型脱毛、AGAです。

AGAの原因はテストステロンから生まれるDHT

AGAの原因は、男性ホルモンの一種であるテストステロンだといわれていますが、テストステロンが直接害を及ぼすのではなく、5αリダクターゼという酵素の働きで、テストステロンからDHTという酵素が作られ、そのDHTが原因の大元であることは、何度も述べてきたとおりです。

毛乳頭の受容体とこのDHTが結びつくことによって、ヘアサイクルに乱れが生じ、成長期が早くに終了してしまい、薄毛が進行するのです。男性ホルモンが多い人は、ヒゲが濃いのですが、ヒゲが濃く、なおかつ髪の毛が豊かという場合、この受容体が少ないのです。

5αリダクターゼや受容体の量は、遺伝的要素によって決定される傾向があります。それらが多いと薄毛になるわけです。以上のことを考えると、AGAを改善するためにできることは、DHTの生成を抑制することだということになります。

結論はこうです。

  • 毛母細胞を活発、元気にする。
  • DHTを抑制する。

以上2点が薄毛治療の決定打なのです。

薄毛治療は本当に可能?「フィナステリド」で5aリダクターゼを抑制する

フィナステリドは、元々は前立腺肥大の治療薬でした。この薬の服用者の髪の毛が伸びるという点に注目して、研究開発されたのが「プロペシア」という名前のAGA治療薬です。これは、世の脚光を浴びた薬です。

DHTは、毛髪の成長を阻害するだけでなく、前立腺肥大の原因でもありました。DHTの働きを抑制したら、毛髪の成長を促したという、思わぬ結果が得られました。アメリカで開発され、1997年に認可、その後日本でも2005年に厚労省によって認可されました。

この薬は、確立された医学的根拠、理論、実際的効果が認められ、はっきりと、世の中の他の怪しげな薬とは区別されるものでした。当院でも、発売当初から、処方しています。

98%の方で、薄毛の進行速度が遅くなる

この薬の3年間の投与試験の結果は、内服1年で、58%、2年で68%、三年間連続服用で、なんと98%の方で、薄毛の進行速度が遅くなるというものでした。この結果は、発毛剤としては、正真正銘のものであり、現在、多くの皮膚科で処方されているのも納得できます。

この薬のいいところは、効き目だけでなく、副作用(本来の目的以外の作用)がないという点です。倦怠感、眠くなる、内臓に影響を与える等がありません。

ただ、これは、男性ホルモンを抑制するので、結果として、男性機能の低下、性欲減退などの自覚症状が出ることもあります。1~5%の人に、ED(勃起不全)や性欲減退、肝機能障害が認められています。

もう一点、フィナステリドが薄毛治療に効果があるといっても、使用できるのは男性のみです。

女性には処方できません。もし、妊婦や、精巣が発達段階の未成年に与えると、男性ホルモンを抑制するわけですから、胎児や未成年の精巣の発達に重篤な影響を与えてしまいます。

薄毛治療は本当に可能?フィナステリドはどれくらい効くのか?

フィナステリドは、薄毛治療に希望を与える夢の薬、待望の薬でした。ただし、実際は、「フィナステリド服用の結果に大満足」という方もほとんどいないということも認めざるを得ません。

先ほどの3年服用の結果と相当なかい離があって恐縮ですが、たとえ生えてきたといっても、生えていなかったところに産毛が生えてきた、生えてきた気がする程度の方が多く、1年服用した人から、「発毛しない」と怒られたこともありました。

3年の連続服用では、もう少しマシな結果も望めなくはないです。しかし、実のところ、当院の患者さんの結果では、抜け毛は確かに減りました。しかし、明らかな発毛、豊かな発毛というのは認められないどころか、全く効果を感じることができなかった人も少なからずおられたというのも事実です。

薄毛治療に過度に期待すると、がっかりする

なぜ、このようにがっかりさせてしまうかもしれないことを書き連ねているのでしょうか?つまり、この薬に、過度に期待されると、がっかりするということです。発毛というより、抜け毛予防と考えて、服用してください。

ただ、予防と言っても、飲んでいる間は効果が期待できますが、飲むのを中止すると元に戻ります。男性機能への影響もあるので、効果と副作用を併せ考えると、あまり早期に飲む薬ではないということを申し上げておきます。

なぜ、薄毛治療効果に個人差が?

では、なぜ、効果に個人差があるでしょう?DHTが脱毛にどれほどかかわりあっているかが、それぞれの人によって差があることと関係しています。最近では、フィナステリドがその人にどれだけ有効か、遺伝子検査で調べられるようになりました。服用する前に検査すれば、効果がないだろう人はお金を無駄にしなくて済みます。

さらに、「将来、AGAになる可能性があるか?」「フィナステリドを予防的に飲むべきか?」ということまで、検査ができるようになりました。こう言っても、フィナステリドは、薄毛予防には有効なこともわかっています。過度に期待することなく、服用するのがいいだろうというのが、10年間、処方してきた医者としての感想です。

次回の記事では、発毛を可能にした待望の薬ミノキシジルやハーグ治療のなど最先端の治療方法について詳しくご紹介したいと思います。

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