実は父親から遺伝しない?医師に聞く「人はなぜ薄毛を気にするのか」

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あらなみクリニック院長(慶應義塾大学漢方医学センター非常勤講師)でありAGAに関する書籍の著者でいらっしゃる荒浪先生にAGA・薄毛・若ハゲに関するお話をお伺いしました。

筆者紹介山さん大手エステチェーン2社にて店舗開発の責任者として200店舗以上の出店業務を担当。美容業界専門行政書士・AJESTHE美肌エキスパート(日本エステティック協会)小池現役看護師 自分の体に強いコンプレックスを感じ、各種二重整形を始め様々な整形術・ダイエットを行った経験を持つ

薄毛は遺伝する?!なぜ男は薄毛を気にするのか

薄毛とは、男性にとっては、大きく注意を払うべきことの一つです。薄毛の原因とは何でしょう?「遺伝」という生まれついての素質も、原因の一つでしょう。しかし、我々現代人を取り巻く様々な要因、たとえば、ストレスや睡眠不足、偏食、運動不足や日々の生活リズムの乱れなどが、薄毛を引き起こしているという考え方もあります。

先天的要因と後天的要因がある

つまり、薄毛の素質を持って生まれたとしても、薄毛を引き起こすだろう後天的要因を避け、十分な睡眠を確保し、ヘルシーな食事を摂り、健康的でストレスのない生活を送ることができるなら、薄毛になることを避けたり、遅らせたりすることができるといえるのではないでしょうか。

では、どうして、男性は、薄毛になることに対して、これほどまでに恐怖感をもつのでしょうか?たとえば、ある年齢以上の男性はみな、髪の毛がなくなるとしたらどうでしょう?もしそんなことになれば、現在の“育毛ビジネス”なるものの隆盛は考えられません。

薄毛問題がこれほどまでに男性に重くのしかかるのは、「人によって、薄毛になる人とそうでない人がいる」という不公平感、不条理さにあるのではないでしょうか。

考えてみてください。髪の毛が薄くなると、その人の内なる人間性が変わるというのでしょうか?そんなことはないにもかかわらず、なぜ、髪の毛があるかないかということに、これほど執着するのでしょう?

薄毛の何が問題?

薄毛になると、何が一番問題でしょう?薄毛になると、顔全体の印象がぼやっとしてしまうかもしれませんが、なにより薄毛の人は、年取って見えるということです。若々しく見られたいというのは、どんな人でもが持つ願いです。

とりわけ、年若い男性にとってその願いは切実です。「老けてみられることによって、女性に見向きもされない」というのは、若い男性にとっては、絶対避けたいことです。薄毛であるという外見は、「男としての盛りを越えた」ということを、あえて他の人に宣言しているようなものです。

オスとしての本能

意識無意識にかかわらず、雄(オス)としての男性性は、自らの遺伝子をできるだけ多く拡散したいという欲求を持っています。しかしながら一般的に言って、背が低い、薄毛である、太っているなどのマイナス要因と考えられる外見は、女性から選ばれないという可能性を大きくすることになります。

また、女性の側から見れば、薄毛であることは、「不健康そうに見える」「弱々しい」ように見え、薄毛である人を避けがちになります。端的に言えば、薄毛であることは、「モテない」に直結するわけです。

どんな人でも、誰にも知られたくない劣等感を抱えながら生きていますが、薄毛の場合、その劣等感を隠しようがなく、女性に近づいたり、言い寄ったりすることに、外見ゆえに躊躇してしまいがちです。

第一印象はやはり重要

「外見より中身で勝負」「外面を飾り立てるより、内面を輝かそう」という考えは、たしかに正しいですし、「薄毛になっても、自分は自分だ」ときっぱり決めたとしても、実際に、自分がそうなったら、なかなか受け入れられないのが人情です。残った髪の毛に執着し、未練たっぷりそれにしがみついてしまうことになります。

一方、肉体的欠点を逆手にとって、成功を勝ち取っている人の話もたくさんあります。たとえば、背が低い、病弱などの劣等感をバネとし、政治、スポーツ等いろんな分野で大活躍されている方々もたくさんいらっしゃいます。薄毛ゆえに、女性との関係を考えず、その分、仕事に励んだ結果、大成功したという方も絶対おられるはずです。

長い人生を送るうえで、なんらかの劣等感は、生きるためのバネとなります。そして、自分自身のあり様に確信を持てれば、髪の毛のことなんか気にせず、突き進んでいけるものです。

そうはいっても、薄毛の本人は、周りの者が考えている以上に薄毛のことを気にしすぎがちです。どうせ薄毛だからというあきらめの意識や被害者意識を持つことは、決していいことではありません。そんな気持ちの持ちようが、薄毛の後天的要因のストレスにもつながります。わかっていても、なかなかそうは思いきれないというのも事実です。

それゆえ、効果の疑わしい育毛剤や発毛サロンに、高額をつぎ込んでいるだけのみならず、だまし取られたという方さえいるというのが現状です。そんな現状を見るにつけ、私はそれを何とかしたいと思うようになりました。

薄毛は遺伝する?!男性ホルモンはあくまで薄毛・AGAのきっかけ

男性型脱毛、たとえば薄毛や若ハゲなどには、遺伝という避けられない原因があります。同様に、男性ホルモンが多いことや、我々を取り巻く現代社会の様々なストレスや生活リズムの乱調なども、その原因だといわれ続けてきました。特に「男性ホルモン」が直接与える影響の大きさに、注目が集まっています。

その男性ホルモンとは何でしょう?男性を男性たらしめるために必須なホルモンのことです。そのうちの「テストステロン」は、睾丸から分泌され、男性としての生殖器や骨格や筋肉の成長発達、そして性欲や積極性の促進、行動に刺激を与えることに大きくかかわっている代表的なものです。

そして、なにより、テストステロンは、毛髪にも多大な影響を与えていることがわかっています。

5αリダクターゼ・DHT(ジヒドロテストステロン)とは?

テストステロンは、「5αリダクターゼ」という酵素の働きで、「DHT(ジヒドロテストステロン)」という活性型男性ホルモン、すなわち、よりパワフルな男性ホルモンに変化させられます。この5αリダクターゼには、1型と2型があり、2型5αリダクターゼのほうが、よりパワフルに男性ホルモンを作りだすといわれています。

作り出されたDHTは、前立腺の成長を促し、精子を形成するなど、男性にとって不可欠の役割を果たすのと同様に、毛乳頭や毛母細胞内での細胞分裂を抑える役割も果たします。その働きによって、毛根の極小化の原因となり、ひいては、それは薄毛、抜け毛の原因になります。要するに、薄毛、抜け毛の一番の犯人は、このDHTということになります。

DHTによって、男性の薄毛・脱毛症の90%以上が引き起こされているとさえ言われています。DHTは、頭髪には最大の問題を引き起こすとだけではなく、他にも男性にとって気になる体毛やヒゲを増やし、前立腺肥大の原因の一ついう厄介なものでもあるのです。

男性ホルモンとは、必要不可欠のものですが、ある意味、男性にとって、とりわけ頭髪にとっては厄介なものであるというのも事実です。しかしながら、最近の薄毛になる仕組みの解明は、薄毛治療に道を開きつつあり、それは、薄毛に悩む者には、うれしい知らせです。

薄毛は遺伝する?!DHTレセプター遺伝子を母親から引き継ぐと薄毛になる

男性ホルモンだけが、薄毛の原因なのでしょうか。もしそうなら、すべての男性が“ハゲ予備軍”だということになります。でも、薄毛になる人もいれば、そうでない人もいるというように、平等にはできていないというのは否定できません。薄毛になってしまう人とそうはならない人は、どこで違ってくるのでしょうか?そこが知りたい一番のポイントですよね。

やはり、「遺伝」というのは、大きな役割を果たしているということでしょうか?発毛に関わる毛根の「パピラ細胞」内のレセプター(男性ホルモン受容体)が問題を引き起こしているというのが、最近の学説です。言い換えれば、このDHTレセプターの感度が高ければ高いほど、薄毛になる傾向があり、このDHTレセプターが「遺伝」するということです。

このことを整理すると、実は、薄毛であるということは遺伝しないということです。受容度の高いDHTレセプター遺伝子を引き継いだかどうかが薄毛発現に大きくかかわってくるというわけです。それだけでなく、薄毛になる時期の早い遅いは、ストレスの有無、食事の偏り、不適切なヘアケア等、外部的な問題も大きく影響します。

父の薄毛とは無縁?隔世遺伝の謎

ところで、「薄毛は隔世遺伝する」ということをどこかで聞いたことがありますか?よく聞くことですよね。たしかに周りを見渡してみても、該当するおうちが結構あります。これはどういうことでしょう?根拠の薄弱な、単なるうわさが広がっただけと見られて、きちんとした研究の対象外でした。

しかし、最近の研究によって、「薄毛は隔世遺伝する」ということが立証されてきました。たしかに、まだまだ薄毛と遺伝子の関係のすべてがわかったわけではありませんが、DHTレセプター遺伝子は、X染色体上のアンドロゲン(男性ホルモンの総称)レセプターの異常であると解明されてきました。

じつは母方の遺伝

昔、生物の授業で習ったことを思い出してみてください。ヒトは、性染色体XY2つの染色体で男性になります。そのうち男性が、母親から受け継いだX染色体に薄毛になる可能性のある要因を含んでいるかもしれないということです。つまり、薄毛の遺伝子というのは、父方からの遺伝ではなく、母方から隠れた形で受け継いでいるのです。

母方のX染色体上のアンドロゲンレセプターが異常を持っていれば、薄毛になる率が高くなります。要するに、母方の父(祖父)から、薄毛になるかならないかの可能性を受け継ぎ、一方、父方の家系が薄毛であっても、その子どもには影響がないと考えられます。

以上のことから、父親が薄毛とは無縁で、いくつになっても豊かな髪の毛をしていても、その息子が若いころから薄毛に悩む場合もあり、また逆に、父親が薄毛であっても、その息子は薄毛にはならず、豊かな髪の毛をしているという場合もあります。これが、薄毛は隔世遺伝するという、生物学的根拠です。